mRNA封入脂質ナノ粒子（mRNA-LNP）

mRNA封入脂質ナノ粒子（mRNA-LNP）技術は、mRNAを細胞内に効率的に届けるための革新的なドラッグデリバリーシステム（DDS）です。この技術は、迅速なワクチン開発や個別化医療の実現に貢献しており、今後も多くの疾患に対する治療法としての応用が期待されています。

mRNA封入脂質ナノ粒子（mRNA-LNP）の構成と役割：

• mRNA
  タンパク質の設計図として機能します。ワクチンや治療薬では、目的の抗原や治療タンパク質をコードするmRNAが使用されます。
• 脂質ナノ粒子（LNP）
  mRNAを保護し、細胞内への送達を助けるキャリアです。主に以下の4種類の脂質で構成されます：
  イオン化脂質（mRNAとの結合とエンドソーム脱出を促進）
  コレステロール（粒子の安定性向上）
  リン脂質（構造の安定化）
  PEG修飾脂質（血中での安定性と粒子サイズの制御）

応用例：

• ワクチン
• がん免疫療法
• 希少疾患治療
• 遺伝子編集（CRISPR-Cas9の送達）

mRNA-LNP製造工程例：

1. DNAテンプレートの設計と合成
   PCRなどでmRNAの鋳型となるDNAを作製
2. in vitro転写によるmRNA合成
   酵素を用いてDNAからmRNAを合成
3. mRNAの精製と品質評価
   mRNAの完全性や純度などを確認
4. 脂質溶液の調製
   各脂質を所定のモル比で混合し、有機溶媒に溶解
5. mRNA溶液の調製
   緩衝液にmRNAを溶解
6. マイクロ流体混合
   マイクロ流体ポンプを使用して、例えば脂質：mRNA = 1：2.5（v/v）の比率でマイクロ流路チップへ送液し、脂質溶液とmRNA溶液を高速混合




7. ナノ粒子生成・mRNA封入
   マイクロ流路内で両溶液が混合され、溶媒中に溶解していた脂質の粒子形成と同時にmRNAを封入
8. mRNA-LNPの精製
   リン酸緩衝液で透析（または超遠心分離）し、生成したmRNA-LNPを精製

マイクロ流体技術によるmRNA-LNP生成vs.従来のバルク混合法：

• 粒子サイズの高い均一性（PDI値が低い）
• 高い封入効率
• 高精度・再現性
• 試料の少量化
• 安全性の向上
• 効率的

脂質ナノ粒子 (LNP) リポソーム生成チップ LNPSC

脂質ナノ粒子 (LNP) リポソーム生成チップ LNPSCは、両側から合流する反溶媒の外層液によって脂質溶液を流路中央部に集束（flow focusing）し、拡散混合させる2D構造を持ちつつ、混合効率を上げるためのヘリンボーン溝も備えています。混合の促進によって溶媒中に溶解していた脂質の粒子形成を行います。ジグザグに配置された多数のヘリンボーン溝は、層流を細かく分岐・方向転換させ、混合効率を向上させます。
接液部材質はガラス（チップ基板部分）とフッ素樹脂（接続・チューブ配管部分）のみのため、高い耐食性を持ち、様々な溶媒を用いることが可能です。
LNPSCが用いるマイクロ流体技術は、特別なノウハウやスキルを必要とせず、多様なmRNA封入脂質ナノ粒子（LNP）を生成することができます。

参考文献

• Felgner J, Hernandez-Davies JE, Strahsburger E, et al. Lipid Nanoparticle Development for A Fluvid mRNA Vaccine Targeting Seasonal Influenza and SARS-CoV-2. NPJ Vaccines. 2025;10(1):123. Published 2025 Jun 11. doi:10.1038/s41541-025-01153-6
• Jacob EM, Huang J, Chen M. Lipid nanoparticle-based mRNA vaccines: a new frontier in precision oncology. Precis Clin Med. 2024;7(3):pbae017. Published 2024 Aug 1. doi:10.1093/pcmedi/pbae017
• Jung D, Jang S, Park D, et al. Automated Microfluidic Systems Facilitating the Scalable and Reliable Production of Lipid Nanoparticles for Gene Delivery. BioChip J. 2025;19:79-90. doi:10.1007/s13206-024-00182-y.
• Leighton LJ, Chaudhary N, Tompkins HT, et al. The design, manufacture and LNP formulation of mRNA for research use. Nat Protoc. Published online June 10, 2025. doi:10.1038/s41596-025-01174-4
• Ogawa K, Tagami T, Miyake S, Ozeki T. Choice of organic solvent affects function of mRNA-LNP; pyridine produces highly functional mRNA-LNP. Int J Pharm. 2025;673:125367. doi:10.1016/j.ijpharm.2025.125367